
カラースキームから始めるコンセプト立案
共有ポイント
- コンセプト決めの段階からカラーを活用しよう!
- 訪れる人や住む人の視点を持って提案しよう!
発表者
営業1部 酒井 理恵子(さかい りえこ)
営業推進部 深澤 麻那(ふかさわ まな)
事例を通してノウハウの共有と営業プロセスの可視化を目指す「ベストプラクティス」。第32回目は営業1部の酒井さんと営業推進部の深澤さんに「ドナルド・マクドナルド・ファミリールーム 榊原記念病院」についてお話を伺いました。MANASの社会貢献活動として取り組んでいるマクドナルドハウスに対する社長の想いと併せてお届けします。
― マクドナルドハウスへの貢献活動はどのようにして始まったのですか?
洋平)私の母親が世田谷のマクドナルドハウスでボランティアをしていた時、建物の老朽化が進んでいて改修をしたいものの、寄付金で成り立っているため費用が足りず困っているという相談を受けました。
実際にマクドナルドハウスへ足を運んでみると、部屋の中にあるのは睡眠を取るためのパイプベッドのみ。明日、お子さまがどうなるかもわからない状況の中で両親が過ごす空間に、MANASとして貢献できることがあるのではないか。そう感じてこの貢献活動を始めることにしました。
私たちの存在意義は利益や効率を上げることではなく、インテリアを通して心から満たされる空間を届けること。会社である以上は対価をもらうことはもちろんですが、それ以上に素敵な空間を必要としている人々が大勢いて、その空間が人生に与える影響もたくさんあるはず。
そのような要望に応えて社会の役に立つことで、会社としての存在意義が上がり、社員のモチベーションや成長にも繋がる。会社として良いベクトルを向いている時って、おのずとMANASで働くみなさんにも良い出会いがあると思うんです。
社員のみなさんにも仕事の中とはいえ、この貢献活動を通じて良い経験を積み重ねていってほしいという願いもあります。
2022年 にいがたハウスのようす
せたがやハウスからスタートして、今では全国12カ所に展開されているマクドナルドハウス。そのうちの6カ所(東京、大阪、埼玉、福岡、仙台、新潟)を担当してきましたが、昨年、日本初のファミリールームを榊原記念病院に設置するにあたり、マクドナルド財団(以下、財団)からご相談がありました。そこで酒井さんと深澤さんにお声がけし、担当していただきました。
― 洋平さんからお声がけがあったときは、どのような心情でしたか?
酒井)(以下、酒)洋平さんからは、「色彩塾での学びを活かしてみない?」とお声がけをいただきました。正直、しっかりと学んだことをアウトプットできるのかという不安はありました。しかし、自分の子どもが1歳の頃に病気で入院した経験もあり、同じ親として少しでも小児患者に付き添う家族の力になりたい。そして、その活動にインテリアの力で貢献できることは大きな喜びだったので二つ返事でチャレンジさせていただきました。
深澤)(以下、深)私は以前、新潟のマクドナルドハウスの活動にも参加させていただきました。一連の流れが分かる人がいた方が良いということで、今回は主に酒井さんのサポートとして参加。今回は窓回りや椅子張りだけでなく、コンセプト立案からMANASへお任せいただいているとのことで、自分自身のチャレンジができる機会だと思い引き受けさせていただきました。
榊原記念病院「ドナルド・マクドナルド・ファミリールーム」
― 物件の内容についてお聞かせいただけますか?
酒井)(以下、酒)2023年12月に東京都府中市の榊原記念病院に「ドナルド・マクドナルド・ファミリールーム」が設置されるとのことでMANASへお声がけがありました。
今回はこれまでのマクドナルドハウスとは異なり、新たな用地取得や多額の建設費用を必要としない院内の休息スペースの設置で、国内で初めての試み。それに加え、今までは窓回りと椅子張りのみのご提案でしたが、今回のファミリールームはコンセプト立案からMANASへ任されていました。洋平さんは財団との窓口、深澤さんは詳細資料の作成、私はプランや仕様決めを主に行っていきました。
*ファミリールームの概要はこちら
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― 具体的にはどのようなプロセスで進んでいったのでしょうか?
酒)以下のプロセスで進んでいきました。
①財団と打ち合わせ
まずは財団との打ち合わせでファミリールームに対する想いと、財団と病院側の理想のルームイメージのキーワードを伺いました。榊原記念病院は、心臓疾患診療をリードする病院。そのため、できるだけ子どもの心臓に負担がかからないように付き添い、心身が疲弊している家族が大勢いらっしゃいます。そんな家族を休ませてあげられるようなファミリールームにしたいという気持ちを受け取りました。
そんな今回のテーマは「心と身体の休息場所」。ポップな内装イメージの「第二の我が家」がテーマのマクドナルドハウスとは異なるように感じました。
②リサーチ
財団から伝えていただいた想いをもとに、自分なりに小児患者に付き添う家族の現状を改めてリサーチ。付き添い入院に関するニュースや、WEBブログ、国内外のマクドナルドハウスの事例などを調べました。
③コンセプト立案
今回は財団、病院、MANASと関わる人が多いため、進めていくうえで独りよがりになったり、関係者間でのギャップが生じたりしないよう、目指す方向性を共有するためのコンセプトシートの作成が必要だと考えました。
打ち合わせ時に伺ったルームイメージのキーワードとテーマを照らし合わせながら、今回のテーマに合うキーワードを抜粋し、そこから連想してコンセプトを「Breathing Time」に設定。その後、コンセプトに合うカラースキーム設定とゾーニングを行い、「RELUX」と「REFRESH」、2つのコンセプトをご提案しました。
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④打ち合わせ(コンセプト発表)
財団と病院側にコンセプトシートをお見せしながら、プレゼンテーションをしました。今までのマクドナルドハウスと同じような彩度が高いポップな内装をイメージしていた方もいらっしゃいましたが、現場で働く看護師の方の意見を参考に「RELUX」に決定。
*コンセプトシートPDFはこちら
⑤詳細仕様決定
カラーコンセプトが決定したら、商材や家具、図面の検討に移りました。家具は名古屋光商事と打ち合わせをしながら決定。さまざまな商材や建材のショールームに実際に足を運び、カラースキームにあてはまるように商材をセレクトしていきました。
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⑥施工・納品
カーテンやアートパネルはMANAS、その他家具などは名古屋光商事や各メーカーにご協力いただき施工、納品しました。
― コンセプト立案をカラースキームから始めていったのですね。
酒)はい。家具の形やマテリアルなどももちろん空間イメージに関わる大きな要素ですが、私は色彩塾に通って、カラーも負けないくらい空間イメージを表現する力があると感じました。 病院という環境の中でリラックスできる空間を、カラースキームとビジュアルイメージと共にご提案することにより、先方も全体イメージが掴みやすくなったのではないかと思います。
カラースキームがぶれることがなければコンセプトもぶれることはない。それを先方に理解していただけたからこそ、細かな仕様を確認せずとも、完成した空間に納得していただけたのだと思います。
*図面・マテリアルプランシートPDFはこちら
― 工夫したポイントはありますか?
酒)商材の素材や形の選定も、コンセプトからぶれないようにセレクトしたことです。「癒」の空間には丸いフォルムの家具を置き、開口部はアーチ状にして自然と心が和むようにする。クッションひとつにしても、ふと持ったときにトリムがついていたら「かわいい」と感じる、やわらかいベルベットの生地を使用することで手触りから癒やしを感じる。商材ひとつ選ぶにしても、「なぜ」それを選んだのかを言語化して伝えられることが大事だと感じました。
深)通常であれば、設計事務所などが入って舵取りをしてくれるところ、今回はすべてMANASで行わなければならず、得意分野以外の部分もハンドルを握っていかなければならない。自由度が高いからこそ、実用性が伴っているのであろうかを考えながら図面を引いたり、家具の形・高さを考えたり、巾木をセレクトしたり…。実際に自分たちが通ってみて動線は問題ないか、人が通れる幅かを確認するなど、いつもなら考えが及ばない部分も想像することは大変でしたが、視野が広がりました。
榊原記念病院「ドナルド・マクドナルド・ファミリールーム」
― 今回の案件を通して、ご自身の中で変化したことはありますか?
酒)今回、ファミリールームを使用する両親がどのような気持ちになりたくて使用するのか、そしてその先の子どもの幸せを考えてコンセプト立案をしていきました。さまざまなバックグラウンドを理解した上での提案とそうでない提案では、先方の汲み取り方も異なるように思います。
トータル提案に力を入れている今日、今回のようなコンセプト提案から入り込むものに限らずとも、普段の案件から“そこに住まう人はどのような生活をしているのか“、“そこでどのように過ごしてほしいのか”という視点をもって提案することの大切さを実感しました。
深)マクドナルドハウスや、ファミリールームはそもそも使われないほうが良い。使用されるということは、その後ろで苦しんでいる人がいる。そんな背景を感じながら今回のプロジェクトに関わり、心地の良い空間が、そこに訪れる人に与える効果を実感し、原点に立ち返ってインテリアの存在意義を改めて考える機会になりました。
また、酒井さんと一緒に進めていくうえで、カラーの知識とコンセプト立案の掛け合わせがとても勉強になりました。
― 皆へのメッセージをお願いします。
酒)社会貢献活動にMANASのインテリアの力で貢献できるという、とても嬉しく貴重な機会をいただきありがとうございました。
インテリアの見た目の美しさだけではなく、その先にある「過ごす人々の感情や暮らしを想像すること」の大切さに改めて気付くことができました。
またマクドナルド財団の活動についても今回はじめて詳しく知ることができましたが、子どもの入院に付き添うご家族に寄り添う姿が本当に素晴らしく、MANASで働く皆さんにももっと知ってほしいと思いました。
深)マクドナルドハウスの活動は、インテリアを通して人々を支える喜びややりがいをダイレクトに感じられます。日々の忙しさのあまり、目の前の業務に精一杯になりがちですが、私たちの仕事が存在する意味を改めて考え、初心に立ち返る良い機会にもなりました。どの部署の方でも知識や経験を生かせる場が大いにあるので、またMANASが協力する際にはぜひ多くの社員の方々に参加していただきたいと思います。
(左)
部署名: 営業1部
氏 名: 酒井 理恵子(さかい りえこ)
入社日: 2013年3月
― 趣味を教えてください。
酒)ピアノが趣味で、30年ほどクラシックピアノを習っていました。
― これからチャレンジしたいことは?
酒)1年前からオンラインでJAZZピアノを習いはじめました。
いつかJAZZセッションに挑戦してみたいです。
(右)
部署名: 営業推進部
氏 名: 深澤 麻那(ふかさわ まな)
入社日: 2019年4月
― MANASの入社経緯をお聞かせいただけますか?
もともとインテリアに興味があり、大学では空間・プロダクトデザインを専攻していました。就職も空間デザインやインテリアを軸に探していましたが、輸入商材が持つ、日本では見られない洗練されたデザインの数々に惹かれ、マナトレーディングへ入社しました。
― いまはどんなお客様を担当されていますか?
営業担当は、杉本(隆)さん、松ヶ下さん、山田さん、田頭さんです。
主にコントラクト・大型ハウジング系を担当しています。
お客様について
客先名 | 公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン |
事業内容 |
1)ハウス運営事業 2)ボランティア普及啓発事業 |
販売金額 | 無償提供(社会貢献活動のため) |
商品 |
2015年 せたがやハウス(東京) |
物件について *施工事例はこちら
物件名 | 榊原記念病院「ドナルド・マクドナルド・ファミリールーム」 |
納品年 | 2023年11月 |
商 品 |
コーディネート提案・カーテン、壁紙、ラグ、アートなどインテリアアイテムの提供 |
売 上 | 無償提供(社会貢献活動のため) |
共同者:齋藤洋平