聴衆を魅了させる力
共有ポイント
- セミナーの目的を明確にしよう!
- メリット・デメリットは正確に伝えてクレームを防ごう!
発表者
営業1部 御所 文子(ごしょ ふみこ)
事例を通してノウハウの共有と営業プロセスの可視化を目指す「ベストプラクティス」。
第31回目は営業1部の御所さんにお話を伺いました。今回の記事では、お客様からも「御所さん」として慕われる理由やその背景、プレゼンテーションの極意など、興味深い内容が盛りだくさん。この記事を通して、皆さんの営業活動のヒントになれば幸いです。ぜひ最後までご覧ください。
― お客様からのリクエストで開催されることが多い御所さんのセミナーですが、そのきっかけや背景についてお聞かせいただけますか?
御所)(以下、御)20年ほど前に、三井デザインテック(以下、三井DT)の営業担当者から、「IC(インテリアコーディネーター)が高級なファブリックを紹介できるよう、販促に効果的なプレゼンテーションをして欲しい」と相談を受けたことに始まります。当時、私はコントラクト営業のほかに、イベントやプレゼンテーション関連の業務も担当しており、こうした依頼に対応することは多々ありました。
代官山ヒルサイドプラザで行われたトレンドイベントの様子
― 相談を受けてから、御所さんはどのように進めていかれたのですか?
御)当時から、EU(エンドユーザー)のインテリアリテラシーが向上すれば、私たちの商品はもっと売れるはずと思い、そのためにはICの方々に商品の価値を理解してストーリーを語れるようになってもらうことが必要だと考えていました。そこで、まずは中堅からベテランのICを対象としたコーディネートセミナーをMANASのショールームで開催することにしました。
最初に、ハウスメーカー仕様の床材にMANAS-TEXやエディターのファブリック、壁紙を組み合わせたコーディネート事例をご紹介。日本の住宅は、当時から床・壁・天井に使われるマテリアルが限られていたので、ヨーロッパなどでつくられる生地や壁紙は新鮮に映ったようです。また、生地メーカーでありながら空間全体をコーディネートするというMANASのプレゼンテーション方法は、他のメーカーにはなく、物珍しかったように思います。振り返ってみると、やっていることは昔から変わっていませんね。
そして、プレゼンテーション後にワークショップに移ります。普段の予算の中で選ぶのとは違い、ICの方に好きなものを選んでコーディネートをしてもらう時間です。その過程でMANASの商材に触れることができ、自然と商品の認知度アップにも繋がりますし、ご自身が選んだものには愛着がわきます。そして、自分以外のコーディネートに触れる機会がないICにとって、他のICのコーディネートを見ることは、新たなアイデアや知識を得る貴重な機会の場になっていたと思います。
野村不動産IC向けのセミナーの様子
ハウスメーカーのICは他社ハウスメーカーのIC同士でも繋がっているようで、セミナーの評判が広まり、次第に「私たちにも開催して欲しい」とリクエストをいただくようになりました。近年はサロン形式でも実施するようになり、当初から構想していた「高級なしつらえを学べるサロン」の実現にも近づいていると感じています。
― プレゼンテーションやセミナーの活動をここまで続けてこられた理由は何だと思いますか?
御)MANASの商材を世に広めたいという強い使命感があるからだと思います。そのため、営業担当からプレゼンテーションの依頼を受ける度に、全国各地を飛び回り、その客先に合わせたプレゼンテーションを行ってきました。ただ、ここで皆さんの念頭に置いていただきたいことがひとつ。私がプレゼンテーションをしに行くということは、会社の経費をかけて販促活動をしに行くということです。客先に合わせたプレゼンテーションを行うために、担当営業はお客様との密なコミュニケーションを通してセミナーの目的を明確にしてください。そして必ず売上を出すことを忘れないで。プレゼンテーションを成功させるためには、営業担当がお客様から得た情報を、「正しく私に伝えてくれること」が最も重要なのです。
2014年に開催された『Time 展示会』での様子
― プレゼンテーションの場を設定する場合、営業担当はどんな準備をしておくべきでしょうか?
御)客先からプレゼンテーションの具体的なアイデアが出ることは多くありません。そのため、最初に客先の現在の売上状況と売上目標を算出してください。そして、必ずマーケット分析を行うようにしてください。これらの情報を基に、客先に合わせたプレゼンテーションを組み立てていきます。
意欲の高い皆さんは、「こんな内容のセミナーを開催したいです!」と積極的に提案してくれることがありますね。そこで私が「なぜそれをやりたいの?」と尋ねると、なかなか答えが見つからない方がいらっしゃいます。セミナーを開催する理由や目的を明確にすることは、成功のための第一歩です。実現できるかどうかは別として、開催したいという気持ちがあるのなら、ぜひ一緒に考えましょう。皆さんのアイデアを具体化し、全力でサポートします。
― セミナーは段取りが一番重要だとお聞きしたのですが、その理由についてお聞かせいただけますか?
御)段取りを確実に行うことで、限られた時間の中でも、お客様が満足してくださる内容に仕上げることが出来るからです。当時、エキスポートマネージャーを務めていたOSBORNE & LITTLEのMariaと、SAHCOのChristianのプレゼンテーションを研究したところ、二人に共通していることがありました。それは、「自社で売りたい商品の組み合わせ」と「それを魅力的に見せるためのストーリー」をプレゼンテーションの中で完璧に表現できているということです。
特に商品の魅せ方で驚いたのは、アイテムの組み合わせごとにまとめて畳みリボンで束ねておく演出と、魅せ終わった後は美しくディスプレイしていく方法。最初に見せるものから順に重ねてあるので、プレゼン中の所作もきれい。このシステマチックな準備と丁寧な演出が、見る人の心を捉え、印象に残るプレゼンテーションを作り出しているのだと実感しました。エディターから学び培われてきた感性は、このようなプレゼンテーションの細部にも宿っていると思います。
左:OSBORNE & LITTLEのMaria 右:SAHCOのChristian
― プレゼンテーションでの商品の魅せ方や言葉選びについて、教えていただけますか?
御)生地をお見せするときは、アレルギーをお持ちの方もいるかもしれないため、絶対に埃を出さないよう丁寧に美しく扱うこと。そして、限られたスペースの中で、お客様が感動するような工夫を心掛けましょう。例えば、クッション用の生地として紹介したい場合、10センチ角に畳んで重ね置きするなど、こういった細かな気配りがお客様の心を掴むポイントだと思います。
2014年に開催された『Time 展示会』での様子
また、クレームに繋げないよう、メリットとデメリットをしっかり伝えることも大切です。インテリアに正解はありません。そのため、「完璧」や「正解」という表現は使わずに、少し違和感のある空間や組み合わせには「~を使うと、空間は俄然良くなりますよね」と、私は伝えるようにしています。
特にカーテンでは、「シアーが一番重要ですよ!」とお話しします。理由は、日中の長い時間に目にするのはシアーだから。その家は日中にレースを開けるのか、それとも一日中閉めるのか、部屋の東西南北はどうか、道路側からの目隠しならこれくらいの透け感が良いなと、窓周りのシチュエーションを細かく確認します。その上で何がメリット・デメリットにあたるかを伝えるようにしてください。ICには、それぞれのライフスタイルに適したプレゼンテーションをしてもらえるよう、私たちから提供できる情報はすべて漏れなく伝えることが大切なのです。
― プレゼンテーションではトレンドの発信などもされていますが、それらの情報はどのようにして収集されているのですか?
御)建築はよく観察するようにしていますね。いまは雑誌やSNSを活用して、海外の施工事例を参考にしながら、トレンドや業界の動向を常に把握するようにしています。その他の収集方法としては、メルマガの活用です。照明のAxolightやDavide Groppi、Trending Nowや1月と9月に情報が入るM&Oなど。ロシアのデコレーションカーテンを参考にするときは、Pinterestもチェックしています。また、エディターがコラボレーションしている企業を調べてその背景を探ったり、インテリアだけでなく、衣食住に関する幅広い情報を収集したりと、お客様により響くプレゼンテーションを行うためのリサーチは欠かせません。
トレンドセミナーの様子
― 御所さんにとって”センスが良い”とは何だと思いますか?
御)インテリアに「センスが良い・悪い」といった絶対的な基準はないと思います。強いて言うならば、居心地が悪いと感じる空間は、どこか「変」に感じられるのかもしれません。センスの良い空間とは、居心地が良いと感じられること、その空間に対して根拠を持った説明ができること、そして、モノの配置や角度が適切であることではないでしょうか。とはいえ、インテリアに正解はありませんから、自分が美しいと感じるのであれば、その空間を作った人と価値観が合うだけで十分だと思います。
― MANAS人生の中でのターニングポイントはありましたか?
御)ターニングポイントとは言えないかもしれないですが、55歳の時に、新人に対して「早期にステップアップしてほしい」と強く思うようになりました。というのも、私が生きているうちに、年商100億円を達成できる会社であってほしいとずっと考えていたためです。その目標を達成するためにも、私がMANASで培ったものは、MANASの中でアウトプットしていこうと。私が持っている情報やスキルは、すべて後輩の皆さんにお伝えしていきたいと思っています。
2014年に開催された『Time 展示会』での様子
― 最後に、皆へのメッセージをお願いします。
御)まずは、何事も将来へのステップと捉え、チャレンジしていってください。そこに問題が生じてしまったら、一人で抱え込まず、仲間と即レビューして、解決策を探していけばよいのです。そして、自分が頑張った時は心の中で「良く頑張ったねー!」とたくさん褒めてあげてくださいね。
部署名: 営業1部
氏 名: 御所 文子(ごしょ ふみこ)
入社日: 1988年7月
― MANASの入社経緯をお聞かせいただけますか?
御)前職では、テレビ制作の美術を担当していました。ハウスメーカーのVP(ビデオパッケージ)の制作で、ロールスクリーンの生地を探していたところ、知人を通じて白金台のショールームをご紹介いただき、MANASと出会いました。当時は生地にステフナ加工をかけてロールスクリーンの制作も可能でした。そして、昭和63年にマナ株式会社に入社。上司は筒井さんでした。
― いまはどんなお客様を担当されていますか?
御)森ビル株式会社、株式会社石井建築事務所(熱海)、設計事務所から独立されたデザイン事務所など